旅館のおもてなしを好きになったきっかけ

はじめて旅館で働く

引っ込み思案で会話が苦手なわたしが、旅館で働くということにハマってしまったきっかけは、ある旅館です。

お金を貯める理由で、九州の旅館にリゾートバイト(派遣として住み込みで働くこと)として、お世話になりました。

旅館で働く体験は、これが初めてでした。

お客様をお名前で呼べるように

はじめに驚いたのは、フロントにすべてのお客様の見た目の特徴などが書いてあること。

どのスタッフもお客様を識別でき、いつでもお客様をお名前で呼べるような体制が整えられていました。

旅館の敷地内には、カフェや売店があります。お客様が各施設に向かわれるときは、内線でどのお客様が来られるかを、見た目の特徴と合わせて連絡。

お客様は敷地内でいつでもお名前で呼ばれ、全スタッフに個別に認識されているという特別感を感じられます。

また、私たちスタッフに親近感を抱いてくれる効果もあるだろうと思います。

実際、私も宿泊中のお客様に、カフェですれ違ったとき、「お部屋にお戻りですか?ごゆっくり」とお声がけをしたところ、すれ違い後うしろから「覚えててくれたんだ、すごいね」とお話されているのが聴こえてきました。

カフェは宿泊以外の一般のお客様もいらっしゃったため、より個人を認識してくれた特別感を感じられたのだと思います。

実はこのとき、私はすごく緊張してお声がけをしました。

旅館のスタッフさんは皆さんこういうことをされている、たぶん今こちらに歩いてこられるお客様は、〇〇のお部屋に宿泊中のお客様だから、何かお声がけをしてあげたい。

そう思ってお声がけをしたところ、後ろから大変嬉しい反応が返ってきました。

おもてなし初心者の私にとって、貴重なおもてなし成功例の一つとなりました。

お客様から得られた情報は宝物

お客様一組につき、担当の仲居さんが一人つきます。

お客様が帰られたあと、一組のお客様に対してA4用紙びっしりの情報が書きこまれます。どんな会話をしたのか、食べるスピードや、細かいことまで。

これを見て、私は感動してしまいました。こんなにお客様のことを考えていいんだと。

次に来られたときのために、お客様から得られた情報は宝物です。

チェックアウト後の清掃でも、もし枕が2つ重ねてあるのを見れば、情報を書き足します。次は少し背の高い枕のご用意のができるから。気持ちいいほどの心遣いです。

チェイサーに氷を入れないというメモのあったお客様。お酒をお持ちした際、氷を抜いたチェイサーをご用意すると、にこにこされて「覚えていたんだね」と仰ってくれました。

おもてなしとは思って成すこと

それからずっと、旅館の仕事をしています。

旅館のおもてなしに感動して、ハマってしまい、私に何ができるかを考える毎日です。

嬉しいことに、お客様から感謝のお言葉、ときには贈り物をいただくこともあり、旅館のおもてなしは、私を幸せにしてくれる仕事です。

おもてなしは、思って成すこと。旅館の接客は、お客様とのかけ合い、と教えられました。

「旅人を迎え、もてなすことは、それほど重い。」

―「加賀屋の流儀」細井勝 著 より

旅館が好きになる人が、これからもっと増えることを願っています。

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